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Q「先生!腹水って何ですか?」
2022年2月14日(月)
Q「先生!腹水って何ですか?」
腹水とは、内臓をしまっている「お腹の膜」と「内臓」の間に水が溜まっている病態を指します。触診でも診断可能ですが、量が少ないとエコー検査をする必要があります。
Q「腹水にはどんな種類がありますか?」
答えは「原因によって腹水の性状が異なる」っていうのが正しいです。
つまり、病気によって腹水の成分が異なるということになります。
腹水の成分で病気の診断が可能なので、獣医師は腹水を診断したら必ず検査します。
Q「腹水の成分と種類を教えてください」
①『漏出液』
血液中のタンパク成分が低くなると血液中から水分が漏れてしまいます。
血液検査でアルブミン値を測定し1.5以下なら低アルブミン症を疑います。
(血液成分の異常)
②『変性漏出液』
血液の流れが悪くなりうっ血によって血管の圧が上昇して、血管外にタンパクが漏れることによって生じます。
(静脈圧の異常)
③『浸出液』
炎症によって炎症性サイトカインによる血管透過性亢進によってタンパク質・炎症細胞が漏れでる。
(生体の大きな炎症)
腹水の検査でその性状から大きく3つに分類し、追加の血液検査、超音波検査を行い診断を行なっていきます。
腹水は病気の診断の重要な手がかりです。
飼い主さんでは発見が難しいため、体調が優れない場合は動物病院に行きましょう。
私事ですが、最近、お腹が出てきてしまって。。。腹水かなって思ったら、「脂肪」でした。
抗てんかん薬の4条件
2022年2月8日(火)
抗てんかん薬(AED)についての基礎知識
てんかんの薬を投与するかは一定の指針がある
1:6ヶ月間に2回以上のてんかん発作がある場合
2:てんかん重積状態あるいは群発発作が認められる
3:発作後の体調が重篤。もしくは発作後体調不良が24時間継続する
4:てんかん発作の頻度・持続時間が3回の発作以降悪化している。
*犬の疾患における特発性てんかん発作の有病率0.5〜0.75%(1000頭中5頭)
猫においては0.5%と言われている
*脳疾患においては特発性てんかんの割合は犬で35%猫で30%である。
「ゾニザミド」
日本で開発された抗てんかん薬で、犬猫にも効果的である。
副作用も少なく、動物用として「コンセーブ」という商品で発売されている。
基本的に1日2回投与の錠剤の薬である。
「レバチラセタム」
人医療で第一選択薬の薬である。
神経細胞の末端のシナプス小胞タンパク2Aに作用し、グルタミン酸などの興奮性物質の放出抑制を行い、
神経の異常興奮を抑える薬である。
この薬は肝臓に負担をかけない薬なので、肝障害の動物でも使用が可能。
半減期が短いので1日3回の投薬が必要になるのと、剤形が比較的大きい、薬代金がやや高い。
安全性が高い薬であるが、ごく稀に攻撃行動などの副作用報告があるが、情報が少なく不明なことが多い。
抗てんかん薬についての注意点
「抗てんかん薬は生涯飲み続ける薬である。」
よって、この薬が安全で、効果的な濃度で投薬できているのかを必ず確認しなければならない。
忙しいとついつい動物病院に薬だけをもらいに行きがちですが、血液検査や血中濃度検査を定期的に行い、
上手に付き合うのがベストです。
もしかして、利尿薬が効いてない?
2022年2月2日(水)
「利尿薬抵抗性って言葉知ってますか?」
僧帽弁閉鎖不全症が慢性経過をたどると、利尿薬がなかなかきかなくなる治療抵抗性を示してきます。
特に利尿薬を投与し始める僧帽弁閉鎖不全症ステージCという段階では、心腎関連症と言って腎臓にも負担がかかってきます。
利尿薬は僧帽弁閉鎖不全症などの心臓弁膜症の患者さんにとても効果がある薬です。しかし時に腎不全を起こしたり、利尿薬の効果がなくなったりするケースがあります。
今日はこの「利尿薬抵抗性」について紹介したいと思います
「利尿薬抵抗性について」
利尿薬というのは、腎機能を刺激・更新させて利尿作用を誘発させる薬です。しかし、慢性的に利尿薬を投与していくと効きづらくなってくる場合があります。これを利尿薬抵抗性と呼びます。
『利尿薬抵抗性の原因』
1腸管からの吸収の低下
→心不全が進行すると血液循環が悪化し、腸管が浮腫んで、浮腫になってしまう。その結果、飲んだ利尿薬が腸から吸収できず利尿薬の効果が発揮できない
2痛み止めなどの非ステロイド性抗炎症薬の投与や脱水症状
→利尿薬は血液中のアルブミンというタンパクと結合して腎臓に運ばれるが、それを阻害する薬や脱水などの全身状態の悪化があると利尿薬が効きづらい
3腎臓の構造的障害
→慢性的に利尿剤を投与し続けると、腎臓の構造的変化が生じた結果、Nαの再吸収が亢進が生じ、尿を産生しづらくなる。
4心不全による腎機能の低下
→心不全が進行するとRASS系(体液量を調節するホルモンの恒常性)と交感神経が活性化して、腎臓が尿を減少させる。(近位尿細管の再吸収)
5心不全の更なる悪化
→心不全によって血液の拍出量が低下し末期的な腎機能障害が生じてしまい、利尿薬が効かなくなる。
利尿薬体制になったときに考える対処法
1投薬経路の変更
腸管からの吸収が減弱している場合は静脈投与に切り替える
2他の種類の利尿薬への使用
スピロノラクトンなどの使用
考察・・・
心不全によって腎臓機能に障害が出た場合、ラシックスやトラセミドなどのループ利尿薬の使用を迷ったら・・・
「カルペリチドの併用を考慮に入れる」ってのも良いのかもしれません。
心臓が悪くなると、なぜ腎臓も悪くなるのか・
2022年1月28日(金)
心臓が悪くなると、なぜ腎臓も悪くなるのか?
心不全によって引き起こされる腎臓病を「心腎関連症」と呼びます。
今回はこの病気のメカニズム:負の連鎖について書きたいと思います。
心臓病になると心臓がうまく血液を循環させることができなくなります。
血液の還流が滞ることによって、ダメージが起きやすい臓器が腎臓です。
心臓が悪化すると拍出量(血流量)が減少し腎臓への血液量の減少が生じます。
血液中の酸素や栄養分を腎臓に届けることができなくなり、腎臓は栄養不足・酸欠状態になって腎臓の細胞が死んでいきます。腎臓の機能がある一定まで低下すると体中の窒素産物を尿として排出する機能が失われていき、それによって体は尿毒症を起こしてきます。
しかし、尿毒症を回避するために腎臓の動脈が過度に収縮してしまう機構(RASSの活性化)が働き、水分だけが尿として排出され、結果的に血中の尿毒素(BUN)が増加してしまいます。さらに心臓病の薬である利尿剤を投与すると、腎臓に負担をかけて尿を産生させ、さらに体を脱水に導きます。結果的に、心臓の薬によって、腎不全に拍車がかかり心不全に腎不全が併発してしまう病態につながります。
獣医師として 心臓病を治療したい!でも腎臓病が悪化するリスクをがあるので慎重に治療のプランニングを行っていきます。
心臓病の治療は、腎臓機能のモニターが必須なんです。
実際に
病院では心腎関連症なのかを判断するために
以下の検査を実地してします
採血による以下の項目のチェック
1BUN
2CRE
3IP
4SDMA
必要であれば尿検査の実地を行います
僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療
2022年1月27日(木)
僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療
僧帽弁閉鎖不全性は小型犬で多くは8歳以上が歳上の犬で75%の割合を占めております。つまり10歳以上になっていると何らかの心臓の弁膜症を起こしていると考えても間違いではありません。
その中で1番有名なのは僧帽弁閉鎖不全症(MRと呼ばれております)です。この僧帽弁閉鎖不全症は重症度によって5段階に分類されています。
ステージA
ステージB1
ステージB2
ステージC
ステージD
ステージDになってくると不可逆的な左心系障害(左心房左心室の重度の障害)によって右心系にも大きなトラブルを起こしてきます.。
重度の僧帽弁閉鎖不全症では左房圧が過度に上昇し,その左房圧が肺静脈に伝わり,それが肺動脈圧の上昇を引き起こします。(圧受動的 伝播による肺高血圧).そして,繰り返される肺うっ血 あるいは肺水腫などによって,肺自体が線維化を起こし、硬い組織になるなどの器質的病変が進行し,肺高血圧に至ります(反応性肺高血圧).
つまり、重度の僧帽弁閉鎖不全は、血流の停滞を引き起こし、肺静脈・肺動脈の柔軟性が損なわれて、血管壁の硬化により肺高血圧症をひきおこします。
僧帽弁閉鎖不全性の末期による肺高血圧症の治療はまだ確立されてはおらず対応に苦慮します。
当院ではACVIMコンセンサスガイドラインに従い処方を心がけています
ピモベンダン 1日3回
ACE阻害剤
利尿剤
アムロジピン
などを中心に投薬していきます。
それでも失神・腹水などコントロールできない場合はシルデナフィルを追加で投薬していきます。
シルデナフィルの用量に関して
急性期では1〜2mg1日3回から開始して必要に応じて調整していきます。
しかし比較的低用量である0.5mg/kg 1日2日より投与することが当院では一般的です効果が不十分な場合は1日3回とする場合もあります
しかしながら僧帽弁閉鎖不全性に併発した肺高血圧症の治療を行うべきかの確立した基準は未だに存在しておりません。シルデナフィルを使用する場合は必ず僧帽弁閉鎖不全性の治療薬(ピモベンダンや利尿剤)を十分に投薬し、心筋収縮力を維持した状態にだけ使用しています。
なぜならシルディナフイルは強力な血管拡張薬なので肺動脈を拡張させ左心室流入血液量が増加することで心不全が一気に進行し肺水腫になると考えられる。
よって僧帽弁閉鎖不全性を伴う場合は高血圧症の治療は必ず心筋の収縮力を増加させるピモベンダンと利尿剤を併用しつつ、状態に応じシルデナフィルを適宜追加をしていきます。
僧帽弁閉鎖不全症にピモベンダンはどれぐらい有効か?
2022年1月27日(木)
「僧帽弁閉鎖不全症に対するピモベンダン(ベトメディン)の有効性」
僧帽弁閉鎖不全性の犬によく使用されている強心剤ピモベンダンがどれぐらい効果があるのかを調べた有名な論文があります。今日はその論文を紹介したいと思います。
「The EPIC STUDY(エピックスタディ:無作為臨床試験」この実験は2016年に行われ、日本を含めた11カ国36施設が参加した大規模他施設、無作為臨床試験です。
360頭の僧帽弁閉鎖不全性の犬で検討され実地されました。(僧帽弁閉鎖不全症のグレードはB1が対象:つまり心肥大兆候があり、症状がない360頭頭に対して実地)詳しい条件は以下の通りです。
左心房大動脈経比(LA/AO> 1.6)LVIDDN> 1.7 VHS > 10.5
非投与群:ピモベンダンを投与しないグループ(プラセボグン)
投与群:ピモベンダンを投与(0.2〜0.3mg /kg 1日2回投与するグループ
予後(生存延長日数)を比較検討しました。
うっ血性心不全もしくは心臓死までの中央値は、およそ15.4ヶ月の延長
さらに、全期間を通じて心臓致命的リスクが36%も減少しました。
この試験は日本を含めた11カ国36節は参加した他施設試験でありピモベンダン投与開始の推奨時期を決定するための貴重な論文です。多くの国々が、協力して、僧帽弁閉鎖不全症にどれぐらい効果があり、どのタイミングで投与をはぜめたほうがいいのかを決定づけた論文です。
「この結果から心不全兆候が見られた場合はピモベンダンを使用したほうがピモベンダンを使用しない場合よりも1年以上の余命が伸びる」という結論に達しています。
転記
https://vetmedin.jp/vet/epicstudy/