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特集2 心臓バイオマーカー

2022年2月18日(金)

NTpro-BNP(心室負荷を評価するホルモン)について

B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は正常な心臓では分泌されておらず、心不全時に心室の筋肉で産生・分泌されるホルモンです。

つまり、心室に問題が生じると分泌されるホルモンなので、心臓の検査としてとても有用です。

心臓は、自律機能(恒常性)を有しており、心室に負荷がかかると、このホルモンが分泌され、血管拡張作用や利尿作用が生じ、結果、心臓の負担が軽減されます。

BNPは心室筋の伸展刺激で分泌されるホルモンであり、ANPより多くの心臓病が診断可能です。心室筋に負荷がかかることで心筋細胞内で産生されたNTpro-BNP(非活性型)とBNP(活性型)に切断されて血中に分泌されます。

犬猫におけるの血中半減期は不明ですが人のNTpro-BNPは血中半減期が約20分と言われております

血中に分泌されたBNPは、ANPと同様に血管拡張作用とナトリウム利尿作用を生じさせます。

Q「なぜBNPではなくNTpro-BNPを測定するのですか?」

NTpro-BNPはBNPより血中では安定しており、また、BNPより血中半減期が長いためNTpro-BNPを測定します。

Q「NTpro-BNPの検査数値の見極めについて教えてください」

①僧帽弁閉鎖不全症の場合

<900

左心不全の可能性が低い

900〜2500

中程度の左心不全

>2500

重度の左心不全

②その他の弁膜疾患と心筋疾患

 重度の右心不全・肺高血圧症・三尖弁逆流症・肺動脈逆流症

 犬猫の心筋症

③高血圧・甲状腺機能亢進症・腎機能低下では容量負荷によって心室筋に負荷がかかりNTpro-BNPが高値を示す。

④猫の心筋症

 猫は正常猫においてNTpro-BNPが100を超えることはない。

 なので>100以上の数値では心室に負荷が生じている状態と考えられる。

Q「NTpro-BNP検査で診断可能の心臓病は?」

 僧帽弁閉鎖不全

 犬・猫の心筋症

 心筋炎

 呼吸器疾患の除外

 心筋梗塞

 重度の右心不全・肺高血圧症・三尖弁逆流症・肺動脈逆流症 

Q「右心不全もこの検査で診断できますか?」

 右心不全の初期では、この数値は上昇しないので、初期の右心不全ではエコー検査が必要です。右心不全が重度になると心室全体に負担が生じるので、NTpro-BNPで検査が可能です。

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<特集>心臓バイオマーカー

2022年2月16日(水)

Q「心臓病は犬猫で多いのですか?」

心臓病は、犬猫において一般的な病気です。

犬では8歳以上で75%が心臓に疾患を有しており、

猫では、生まれつき心筋症という病気を持っている猫も多くいます。

一般的に症状がないと病院に来ることはなくて、診察を受けて、

すでに進行して発見されるケースがとても多いのが実情です。

 

Q「心臓病は血液検査で診断できますか?」

現在、獣医療では心臓の血液心臓の検査において心臓の状態を測定することができる心臓バイオマーカーが開発され、臨床現場で広く使用されています。

 

Q「心臓バイオマーカーとはどういう物質ですか?」

心臓は体の臓器で一番重要な組織であり、重要な機能を司っているため、心臓の障害が生じると生体に知らせる信号というのが多数存在します。これを心臓バイオマーカーと呼んでいます。

 

Q「心臓バイオマーカはどんな種類がありますか?」

心臓バイオマーカーは心房筋・心室筋それを構成している心筋細胞から産生分泌され血液検査で測定できる物質です。獣医医療において検査が可能な心臓バイオマーカーは3種類あります

①A型ナトリウム利尿ペプチド(ANP)

②N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチドを(NT-proBNP)

③心筋トロポニン(cTnl)

これらの心臓バイオマーカーにはそれぞれ特徴があるため。現場の獣医さんが心臓の病状に鑑みて測定します。

猫のSAAの診断的意義と弱点

2022年2月8日(火)

炎症マーカについて

炎症マーカーは炎症発生時に鋭敏に反応し、そして速やかに上昇し、炎症が収まるとともに速やかに低下していくので、病気の発見、そして治療効果の判定において優れたツールです。

この炎症マーカーはヒトの医療検査では「C反応性蛋白」という名前で知られており、肺炎時の「肺炎球菌と交差性を示す蛋白」として発見されたため、C反応性蛋白CRPと命名されました。

猫の炎症性マーカーはSAAが有名ですが、猫のSAAは実は人も肝臓で作られています。

感染や外的要因が生じると抗原提示細胞からサイトカインが産生され、肝臓内でSAA・CRPの産生が生じます。

アミロイドは放出されすぎると全身に沈着を起こしてアミロイドーシスという疾患を生じさせる。この前駆物質がSAAである。

「このSAAは万能な炎症マーカーなのか?」

このSAAは全ての炎症で上昇する炎症マーカーではありません。

炎症の程度や重大な生体疾患が存在するとSAAは上昇しますが、上昇しない場合があるので注意が必要です。

 

SAAを測定する診断的意義。

 ①リンパ腫・急性膵炎・FIP

   特に猫の消化器型リンパ腫で顕著な上昇が起きるのでリンパ腫を疑うための重要な検査です。

*慢性腎不全屋甲状腺機能亢進症では非炎症疾患であるにもかかわらず上昇している場合もあるので、注意が必要

②治療効果の判定

  SAAが上昇している場合、治療に反応してくると低下してくる。治療効果の判定に有用です。

③予後因子

  SAA上昇が止まらない場合は生存期間が短いと言われています。

*注意 

「SAA検査の弱点」

SAAは非常に診断ツールとしては優れているが、上昇しない場合もあります!!

一概にSAAが高くないからと言って、炎症の有無を判断すべきではなく、補助診断ツールとして有用に活用するのが重要!!

猫ちゃんの第二の体温計:「SAAについて」

2022年1月31日(月)

猫ちゃんの第二の体温計:「SAAについて」

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炎症といっても患者さんが痛い辛いと言わない限り炎症が起きているのかどうか、獣医師が判断することはとても難しいです。人では体温計を使いますよね。もちろん犬や猫ちゃんでも体温を測定しますが、滅多なことじゃないと体温は上昇しませんし、体が弱っているのに体温は正常なことだってたくさんあります。

なので、猫ちゃんの体調を判断するのには体温計だけではわかりません。動物医療にとって獣医師が炎症に築けるかどうかはとても重要なポイントなので、今日は炎症マーカーについて記事を書きたいと思います。

人間では炎症の判断について、血液検査で炎症性マーカーというのが古くから使われてきました。人間の炎症性マーカーはCRP(別名C反応性蛋白)と呼ばれます。これは血液検査で簡単に測定が可能であり、この数値が高いと生体メカニズムに大きな影響与える炎症が存在すると診断ができます。

以前までは人間用のCRPを応用して獣医領で検査として使用できるかなど、模索した時代もありましたが結果的にうまくいきませんでした。

その結果を受けて犬用のCRP 検査の開発が行われました。

現在、犬のCRPは人間と同様に血液検査機械で院内検査が可能です。

CRPの値が高いければ「生体メカニズムに大きな影響与える炎症が存在する』と考えて治療に対応することができます。

「では猫はどうやって炎症の有無を判断するの?」

猫は痛みがあっても飼い主に伝えることがあまりなく大変繊細で痛みのストレスで手遅れになってしまう場合がとても多い動物です。

猫では犬のCRPと同様、炎症反応性蛋白を測定する研究が行われてきました。そして猫の炎症を示唆する炎症マーカーであるSAAを発見し測定することが可能になりました。

これにより猫ちゃんの炎症の有無を詳しく簡単に調べることが可能になり、多くの猫ちゃん達の診察に有用なツールになりました。

心臓が悪くなると、なぜ腎臓も悪くなるのか・

2022年1月28日(金)

心臓が悪くなると、なぜ腎臓も悪くなるのか?

心不全によって引き起こされる腎臓病を「心腎関連症」と呼びます。

今回はこの病気のメカニズム:負の連鎖について書きたいと思います。

心臓病になると心臓がうまく血液を循環させることができなくなります。

血液の還流が滞ることによって、ダメージが起きやすい臓器が腎臓です。

心臓が悪化すると拍出量(血流量)が減少し腎臓への血液量の減少が生じます。

血液中の酸素や栄養分を腎臓に届けることができなくなり、腎臓は栄養不足・酸欠状態になって腎臓の細胞が死んでいきます。腎臓の機能がある一定まで低下すると体中の窒素産物を尿として排出する機能が失われていき、それによって体は尿毒症を起こしてきます。

しかし、尿毒症を回避するために腎臓の動脈が過度に収縮してしまう機構(RASSの活性化)が働き、水分だけが尿として排出され、結果的に血中の尿毒素(BUN)が増加してしまいます。さらに心臓病の薬である利尿剤を投与すると、腎臓に負担をかけて尿を産生させ、さらに体を脱水に導きます。結果的に、心臓の薬によって、腎不全に拍車がかかり心不全に腎不全が併発してしまう病態につながります。

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獣医師として 心臓病を治療したい!でも腎臓病が悪化するリスクをがあるので慎重に治療のプランニングを行っていきます。

心臓病の治療は、腎臓機能のモニターが必須なんです。

実際に

病院では心腎関連症なのかを判断するために

以下の検査を実地してします

採血による以下の項目のチェック

1BUN

2CRE

3IP

4SDMA

必要であれば尿検査の実地を行います