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猫を迎え入れたらすること:③-2 ウイルス検査

2024年6月15日(土)

前回の続きです、、、 

 

『猫免疫不全ウイルス(FIV)』

このウイルスは唾液等の分泌液を介し、喧嘩や交尾によって感染が広がります。

また、FeLV同様母猫がFIVに感染していた場合胎盤や乳汁を介して子猫に感染が広がる可能性もあります。

(犬や人に感染することはありません。)

 

そして、FIV感染=発症というわけではなく、ウイルス検査で陽性でも症状を示さない猫もいます。さらには、そのまま発症することなく寿命を全うする猫もいます。

(感染から発症までの期間には個体差があります。) 

 

では、発症してしまうとどのような症状が出るのか

初期は発熱や下痢、食欲減退等から始まり、次第にリンパ節が腫れたり口内炎や貧血、免疫機能が落ちることで日和見感染等が見られます。

 

FeLV同様ウイルスを完全に排除する治療は今のところはありませんが、無症状の場合は経過観察を行い、症状が出た場合はそれに対する治療を行います。 

 

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これらのウイルスの予防として、室内飼いをすることで感染猫との接触を避けることが最も効果的です。寄生虫予防や他の感染症予防の観点からも、猫ちゃんの完全室内飼いをおすすめします。

 

また、FeLVFIVもそれぞれに対するワクチンが存在します。

よくお外に行く等感染リスクの高い猫ちゃんは、ワクチンを打つ必要があるかどうか主治医の先生としっかり相談してください◎

 

猫を迎え入れたらすること:③-1 ウイルス検査

2024年6月14日(金)

こんにちは🙂

今回は猫を迎え入れたら病院ですること第3段!ウイルス検査についてです。

 

主に病院で検査するウイルスは2つ

・猫白血病ウイルス(FeLV)

・猫免疫不全ウイルス(FIV)

外で生活している猫に見られることが多いウイルスです

 

これらは、簡易キットを用いて検査します。

当院で使用している検査キットは、血液を数滴滴下し、約10分待つと結果が出るというものを使用しています。

 

『猫白血病ウイルス(FeLV)』

FeLVに感染した猫の唾液や血液、糞便などを介して感染します。

また、母猫がこのウイルスに感染していた場合、胎盤や乳汁を介して子猫に感染することもあります。

(犬や人に感染することはありません。)

 

感染した時に免疫が十分働いていればウイルスを排除することができます(=治る可能性がある)が、免疫が不十分である場合は体内からウイルスを排除することができず一生ウイルスを保有することになります。この状態を持続感染といいます。

持続感染しやすい猫は、生後すぐで感染した子猫です。逆に、1歳以上になってくると持続感染の可能性は低下していきます。

感染=発症というわけではなくウイルス検査で陽性という結果が出ても症状を示さない猫もいます。しかし、持続感染している猫は発症する可能性が高く、また、発症してしまった場合の死亡率は非常に高いとされています。

発症時の症状は、貧血やリンパ腫などの血液の病気から免疫力の低下による口内炎や日和見感染。また、流産や腎臓病などいろいろな病気の原因となります。

(日和見感染:他の感染症にかかりやすくなること)

ウイルスを完全に排除する治療は今のところはありませんが、無症状の場合は経過観察を行い、症状は出た場合はそれに対する治療を行います。

猫免疫不全ウイルス(FIV)については次回に続きます…

猫を迎え入れたらすること:②-2寄生虫検査

2024年6月11日(火)

前回の続き、内部寄生虫についてです。

内部寄生虫とは、動物の体内に寄生する虫です。

 

病院では、その内部寄生虫がいるかどうかを糞便から見ます👀

直接糞便を顕微鏡で見る方法や、糞便を飽和食塩水という液体に溶かしてその上澄みを見るという方法があります。これによって虫自体や虫の卵がないかどうか確認します!!

 

内部寄生虫もその種類は様々ですが、今回は比較的見られやすい消化管に寄生する寄生虫について紹介します。

 

『回虫(猫回虫)』

糞便に含まれる猫回虫の卵を摂取することや、猫回虫が寄生している母猫の乳汁を子猫が摂取することが主な感染の原因です。また、鳥や鼠を捕食することも感染の原因となります。

猫回虫の症状として無症状のものもありますが、消化管に寄生し物理的な刺激を与えることで下痢や嘔吐などの症状(=消化器症状)を引き起こすことがあります。また、猫回虫は人にも感染する可能性があります。

 

『瓜実条虫』

瓜実条虫はノミを介して感染することがあります。瓜実条虫の卵を摂取したノミを猫が捕食することで感染します。もちろん、糞便に含まれる瓜実条虫の卵自体を摂取することで感染することもあります。

症状としては、無症状な場合もありますが、消化器症状から重度になると発作などの神経症状を示すこともあります。また、まれに人に感染することもあります。

ちなみに、糞便や肛門付近にお米みたいなものがついている、、、という時は瓜実条虫である可能性があります😌

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内部寄生虫の中には予防薬で予防できるものもあります。

寄生虫検査を受けることや予防薬でしっかり予防することで、その猫ちゃんだけでなく周りの猫ちゃん、そして飼い主様ご自身の健康を守りましょう!!

猫を迎え入れたらすること:②-1寄生虫検査

2024年6月10日(月)

こんにちは🙂今回は猫を迎え入れたら病院ですることシリーズ第2段!

寄生虫についてです。

こちらは特に元々外で暮らしていた猫にとって重要な項目となります◎

 

寄生虫と言ってもたくさんの種類がありますが、

これらは大きく分けると外部寄生虫と内部寄生虫に分けられます。

 

今回は外部寄生虫についてのお話しです。

 

外部寄生虫とは、体内ではなく体の表面や耳などに寄生する虫たちのことで

ノミ、マダニ、ミミヒゼンダニ等が含まれます。

 

『ノミ』

ノミは動物の体に寄生し吸血します。この吸血時に、ノミの唾液が寄生されている動物の体の中に入ることでアレルギー反応が出ることがあります。

また、ノミを介して動物間で感染が広がっていく病気もあります。ノミが病気の運び屋として働くということです!!

 

『マダニ』

マダニも動物の体に寄生し吸血します。

マダニ一匹一匹が吸血する量は少ないですが、これがたくさん寄生すると貧血を起こしてしまいます。また、マダニもノミと同じように病気の運び屋となることがあります!!

(ノミとマダニが運ぶそれぞれの病気については、また別の機会にお話しできればと思います)

 

『ミミヒゼンダニ』

動物の耳に寄生し、痒みを引き起こします。また、乾いた黒い耳垢が出てくることも特徴のひとつです。

痒いから耳を掻く耳に傷ができる化膿することで外耳炎に繋がることもあります。

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これらの検査方法は目視で確認👀することです。

皮膚の表面を直接見たり、耳垢などを顕微鏡で観察します。

もし見つけた場合は駆虫薬で対処します。

 

また、これらには予防薬があります。

予防薬は1種類ではなく、投与スタイルや間隔が異なる様々な種類があるため、主治医の先生と相談してなにを使うか決めてください。

 

猫を迎え入れた最初だけでなく、

定期的に病院に行き予防することをお勧めします!!

 

 

猫を迎え入れたらすること:①ワクチン接種

2024年6月9日(日)

 

こんにちは🙂今回は猫を迎え入れたら病院ですることシリーズ第1段!

ワクチン接種についてお話ししたいと思います。

我々が自分のワクチンを打ちに行くときは、これから自分は何に対してのワクチンを打つのか明確にわかっている状態で病院に行くと思います。

では、猫ちゃんのワクチンはなにを予防しているのかご存知でしょうか。

 

猫のワクチンには、コアワクチンとノンコアワクチンが存在します。

 

コアワクチンとは全ての猫に接種したいワクチンで、

ノンコアワクチンは感染リスク(よく外に出る子や野良猫との接触機会がある子)があるかどうかによって打つ必要があるかを判断するワクチンです。

 

ここでは、コアワクチンについてをお話ししたいと思います

猫のコアワクチンとは、3種混合ワクチンのことを指します。

これは名前の通り3種類のウイルスに対応しています。

猫カリシウイルス

猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス

猫汎白血球減少症ウイルス

これを子猫は複数回、それ以降は年に1回を目安に接種します。

(適切な接種回数や間隔はその子によって異なるので、主治医の先生と相談してください。)

 

それでは、このウイルスに感染するとどのようになってしまうのか

それぞれ詳しくお話しします。

<猫カリシウイルス>

いわゆる猫風邪の原因ウイルスです。

ウイルスを体内に持つ猫の分泌物(=唾液や鼻水等)や空気を介して感染します。

発熱、くしゃみ、鼻汁等人間の風邪に似た症状から関節炎、口腔内の潰瘍、肺炎など様々な症状を起こします。

また、体内にウイルスが存在するものの症状を示さないタイプもあります。このタイプは感染源として特に注意が必要です。

(口の中の潰瘍等はなかなか気づきにくいですが、口の中が痛いが故に『ご飯を食べない』や『グルーミングが出来ず毛並みが悪い』ということに繋がっている可能性もあるので参考にしてみてください😌

 

<猫ウイルス性鼻気管炎ウイルス>

こちらも猫風邪の原因となるウイルスで、これの正体はヘルペスウイルスというものです。

先ほどのカリシウイルスと感染経路も症状も似ているのですが、こちらは重度の結膜炎を起こします。

また、ヘルペスウイルスは一度感染すると永続的に体内に存在し続けるため、一度回復してもストレスにより再び症状が出ることがあります。 

 

<猫汎白血球減少症ウイルス>

こちらの正体はパルボウイルスです。

ウイルスを体内に持つ猫の唾液や糞尿、血液が口に入ることで感染します。

このウイルスの感染力はとても強く、直接ウイルスを持つ猫に接触していなくても、人間の手や周囲のものに付着してしまった唾液等を介して感染してしまうことがあります。

症状としては、下痢や腸炎などの消化器症状をメインに引き起こします。重度の下痢から脱水を引き起こし、最悪の場合死に繋がる可能性もある危険なウイルスです。

また、その名の通り白血球が少なくなるため免疫が低下し他の感染症に罹りやすくなったり、幼い頃に感染すると脳の形成不全を起こしたりもします。

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これら3つの病気を予防できるのが、3種混合ワクチンです。

しかし、ワクチンにはアレルギー反応等の副作用も存在します。

今までワクチンを打って副作用が出たことがないという子でも、ワクチン接種時は毎回気を抜いてはいけません!!

その日の体調を含めしっかりと主治医の先生と相談してからワクチン接種してください😌

猫を迎え入れたら…

2024年6月7日(金)

猫はすごく可愛いです。

頭の先から尻尾の先まで余すことなく可愛い、

ただ歩いているだけで最高に可愛い魅惑の生き物です。

 

この世には、ネコを飼いたいけど具体的に何をすればいいかわからないし、それがハードルとなりなかなか猫ちゃんの底なし沼に飛び込む一歩が踏み出せない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

ここでは、そんな方へ最初の一歩を踏み出すお手伝いができるように『猫を迎え入れたら病院ですること』をご紹介したいと思います。

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猫を迎え入れたら病院ですることは、大きく分けて4つ。

①ワクチン接種

②寄生虫検査

③ウイルス検査

④避妊去勢手術 です。

これだけ見ても、寄生虫ってなに?ウイルスってなんの?というかワクチンってなにを予防してるの?というお話なので、

これから3回に分けてそれぞれを詳しく説明していきたいと思います!!

(④の避妊去勢手術については他のページでご紹介しているので、そちらを見ていただければと思います🙇

 

オスの犬と生活している飼い主のみなさまへ。去勢手術についてのお話

2022年9月30日(金)

オス犬が、メス犬に性的に強い興味を持ったり、縄張り意識を持つようになったり、ほかの犬に攻撃性が出たりする一連の変化を性成熟といいます。犬が性成熟に達する時期は、

小型犬では8~10か月齢

大型犬では10~12か月齢

が一般的です。

オス犬が性成熟に達すると、発情が起こります。メス犬には、発情期があり、1年間に1~2回の周期がありますが、オス犬には発情期がありません。つまり、年中発情できると言うことになります。

メス犬のニオイ(フェロモン)を嗅ぐといつでも発情となりますので、不要な興奮を避けるためには、発情期のメスに近づけないようにすることも必要です。

 

発情するとオス犬はどのような行動に出るのか。

マウンティング。前足で抱え込んで腰を振る行動です。

本来、マウンティング自体には、様々な理由があるとされています。しかし、特に、発情したメスが近くにいる場合には、交尾をしたい。という本能的な行動である場合が多いので、その場から離れましょう。屋外飼育のオス犬の場合、発情期のメスの存在に対して、脱走してでもたどり着きたいという衝動に駆られることがあり、交通事故の原因にもなりますので、注意がひつようです。それほどまでに想ってしまうということは、交尾欲がかなわないと強いストレスを繰り返すということになるでしょう。

 

マーキング。発情中のメスにアピールするために、わかりやすいのは足を上げておしっこをするようになるという変化です。より大きい犬と見せかけるために、できるだけ高い場所におしっこをするという説もあります。

色々な場所でおしっこをして回り、最終的には足を上げているだけでおしっこが出ていないこともあります。犬は、記憶の動物なので、

『おしっこはいろんなところに、かけて回るものです』

という記憶が定着してしまう前に、去勢手術をすることで、マーキング行動の軽減が見込めます。最近のエピソードとして、去勢手術をする前と後で、電信柱にご挨拶する回数が格段に減ったので、お散歩時間が半分になったご家族がいらっしゃいました。

攻撃性。未去勢オス同士の喧嘩、発情期のメスをめぐっての争いが激しくなることがあります。

大きなけがをする前に、引き離すことが大切ですが、未去勢のオス犬を飼っている場合には、周囲の状況を確認しながら散歩やドッグランを楽しみましょう。

 

以上のような、行動のトラブルを予防したり、性ホルモンによる疾患、そもそも精巣自体が病気になることを予防するために、動物病院では、仔犬のうちに去勢手術をお勧めしています。

 

去勢手術は、精巣を摘出する手術です。

生まれたときはおなかの中にある「精巣」。数か月かけておなかの外に移動して、陰嚢という袋に入ります。去勢手術の時期については、諸説ありますが、少なくとも陰嚢に精巣が入ることには、去勢手術は可能になると考えられます。その他、乳歯(特に犬歯という牙)と永久歯の生え変わりのタイミングも、手術時期の検討ポイントになることがありますので、後ほど説明したいと思います。

去勢手術のメリットとデメリットについてお話します。

去勢手術をするメリットとしては、

①病気を防ぐことができる

②マーキングが減る

③ストレスが減る

④望まなし妊娠の予防になる

が挙げられます。

メリットその1 病気を防ぐことができる

精巣そのものを摘出する手術なので、「精巣腫瘍」など、精巣の病気の心配がなくなります。特に、生まれたときのままおなかの中に精巣が残ってしまった子の場合、「ガン化」する確率が上がることが分かっているので、陰嚢に精巣が降りてこない場合は、積極的に去勢手術を検討した方がよいです。その他、男性ホルモンが出続けることで高齢になってから発症することが多い、「前立腺肥大」「肛門周囲腺腫」「会陰(えいん)ヘルニア」を予防、または治療することができます。

メリットその2 マーキングが減る

性成熟に伴い、縄張り意識の高まりによって、マーキング行動が出ます。出始めのタイミングで手術することで、ホルモンの分泌が抑えられて、マーキング行動がおさまることが多いです。初期の段階を逃し、マーキング自体が習慣化してしまうと、去勢手術をしてもマーキングは変わらないという可能性が高まりますので、注意が必要です。

メリットその3 ストレスが減る

未去勢の場合、発情は年中無休。交尾欲や攻撃性、縄張り意識の高まりなど、様々なストレスを感じやすくなります。飼い主さんへの攻撃性にかかわりが出てくることもあります。

 

メリットその4 望まない妊娠を防ぐことができる。

万が一、脱走したり(発情期のメスを想うエネルギーはとても強いものです)ドッグランなどで発情期と知らずに遊びに来ているメス犬と交尾してしまう。という事故を防ぐことができますし、メスを含む多頭飼育の場合は、とても重要なことです。

 

様々なメリットのある去勢手術ですが、デメリットもあります。

最大のデメリットは、太りやすくなる。という点です。肥満のなりやすさは、2倍ともいわれています。去勢手術を行うことで、性ホルモンが変化し、自由に食事を食べられるように飼育すると食事量は22%上昇するといわれています。それに対して、必要なカロリーが30%減少することも分かっています。手術前と同じ食事を、それまでと同様に与えていると、それだけで肥満につながるということになります。

肥満は、「関節疾患・心臓疾患・下部尿路疾患・皮膚疾患」などの発生リスクを高め、寿命にも関わりますので、対策が必要です。

去勢手術を受けることで、肥満になりやすいということをあらかじめ理解して、太ってしまう前に対策を講じることで、適正体重を保つことは難しいことではないので、去勢手術の時に獣医師とよく相談をして、計画を立てるとよいでしょう。

次に考えられるデメリットとしては、去勢手術に関する全身麻酔と手術のリスクです。全身麻酔をして、体にメスを入れる手術は、どんなものもリスクを伴います。去勢手術は、体の表面に出ている精巣を摘出する場合は、技術的には簡単な種類の手術ですが、おなかの中に留まっている精巣(停留精巣)の手術の際は、開腹手術を必要としますので、術前のチェックの際に、精巣がどこにあるのかをしっかり確認する必要があります。成犬になる前に、手術を行うこと心配される方も多いですが、まだ小さいうちに行うことによって傷が小さく済んだり、麻酔の量も少なくて済みます。一般的な去勢手術は、適切に行えば決して危険な手術ではありません。麻酔や手術を行っても問題がない状態かどうかなど、全身のチェックや血液検査などの術前検査も行いますし、近年、痛みの研究も進み、術後すぐから生活レベルが元通りの状態を保てる子も増えてきました。術後、傷口を清潔に保ち、こまめに観察することで合併症の予防になります。

3つ目のデメリットについては、去勢手術は精巣を摘出し、精子を作れない状態にする手術です。もしも、飼い犬の子孫を残したいというお考えがある場合は、去勢手術をしてしまうとその願いは叶わなくなってしまいますので、ご注意ください。しかし、犬は安産と言われているほど、安産な動物ではありませんので、実際に妊娠、出産をしてくれるメス犬を探すことも簡単ではありません。生まれた仔犬のこと、母犬のこと、よく考えて決めましょう。

 

去勢手術の時期と歯の生え変わりについて。

犬は、生まれたときに生えている乳歯が抜けて、永久歯に生え変わる動物です。オス犬の場合、マーキングなどの行動が出始める時期と、歯の生え変わりの時期が重なります。犬歯(牙)は、永久歯が乳歯の半分の長さまで生えても抜けなければ、自然に抜ける可能性は低いとされており、自然に抜けない乳歯は、全身麻酔をして人工的に抜歯が必要になります。短期間に2回全身麻酔をかけることを考えると、去勢手術と抜歯のタイミングを合わせるご家庭も多いので、時期については獣医師にアドバイスをもらうといいでしょう。

まとめ

去勢手術は、オス犬が、人と家族として快適に生活するためには、利益の多い選択肢です。去勢手術を行うことで、オス犬特有の縄張り意識の高まりや、それに伴うトラブルの回避、ストレスをコントロールすることができます。精巣があることによって、長生きしているその先に起こりうる、病気の予防にもなります。

仔犬を迎え入れたら、去勢手術のお話をさせていただきますので、ご家族でよく話し合い、手術の時期を決めてください。

 

わからないことは、お気兼ねなく質問してくださいね。

不妊手術のお話

2022年9月30日(金)

こんにちは。

今回は、メス犬の不妊手術についてお話してみたいと思います。

メス犬が、交配すると妊娠することができるようになる能力(生殖機能)が備わることを、性成熟と呼びます。犬が性成熟に達する時期は、

小型犬では8~10か月齢

大型犬では10~12か月齢

が一般的です。

 

メス犬の発情期は、性成熟に達してから超高齢になるまで、通常は1年間に1~2回訪れます。人間の場合は、閉経がありますが、犬のメスは人間の肉体年齢に換算すると50歳前後である7~8歳でも妊娠は可能で、人間でいう閉経は訪れません。個体差があるので、何歳まで発情出血があるのかは一概には言えませんが、超高齢犬になって、全身の機能が低下しない限りは、シニア期以降も発情出血が見られるケースが多いです。反対に、明確な出血がないように見えることもあります。個体差が大きいのが特徴です。

 

メスは、発情出血がある、発情前期に入ると、外陰部(尿が出る方)が次第に腫れて大きくなります。そのため、違和感を覚えて陰部をしきりに舐めたり、頻尿(尿の回数が多く、1回の尿量が減ります)になったり、不快感を抱いて飼い主さんについて回るなどの行動が見られる犬が少なくありません。なかには、食欲が減り、ご飯を食べないようになる犬もいます。飼い主さんにしがみついて腰を振るマウンティング行動を見せる犬もいるでしょう。ただし、これは、性的な興奮が原因で行っているのではなく、陰部の不快感を取り除こうとしている可能性もあります。

また、不快感やストレスから、普段はおとなしくてフレンドリーなのに飼い主さんに対して攻撃的になったり、発情出血後の「偽妊娠」という時期には巣作りや疑似的な子育てをしているような感じで、ぬいぐるみなどを肌身離さず守るメス犬もいます。

身体的、精神的の両側面から、ストレスがかかっている状態といえるでしょう。

飼い主さんが、愛犬の妊娠出産を希望しない場合、獣医師は、卵巣子宮全摘出術をはじめとした、不妊手術をお勧めすることになります。

 

それでは、動物病院で不妊手術をお勧めする理由についてお伝えします。

 

不妊手術をするメリットとして挙げられるのは、主に3つです。

①乳腺腫瘍の発生率を下げること

②子宮蓄膿症の予防

③発情中の生活に関する問題の解消

 

①乳腺腫瘍は、乳腺にできる腫瘍のことで、悪性だとガンといいます。不妊手術をすることによる、乳腺腫瘍の予防効果は、初回発情前では99.5%、1回目の発情後では92%、2回目の発情後では74%、2.5歳以降では予防効果なし。ということが分かっています。

 

②子宮蓄膿症は、子宮に膿がたまる病気で、性ホルモンが出続けることで起こりやすくなる病気です。動物病院の現場では、不妊手術をせず、出産をしないメス犬に、高齢になってから発症することが多い印象です。必ずしもかかる病気ではありませんが、犬特有の性ホルモンの動きが影響し、子宮蓄膿症にかかることが多いです。年齢に伴う、麻酔のリスクが高まる年齢で病気になるため、命にかかわる状態になるケースも見られます。犬は閉経がないため、発情出血だと思っていたら子宮蓄膿症だった。という場面に遭遇することもあります。

 

③発情と生活 不妊手術を受けることで発情がなくなります。発情が起きるとどのようなことに注意しなければならないのか、お伝えしますね。

メス犬の発情期には、散歩に行っても問題はありませんが、ほかの犬との接触は避けましょう。散歩中にオス犬めがけて駆け寄ってしまうこともあるので要注意。しっかりとリードを握っておき、交通事故を予防してください。

ドッグランやトリミング、ペットホテルの利用については、発情前期と発情期には控えなければなりません。発情期特有のフェロモン臭がオスを興奮させ、オス犬が一緒にいるスペースではオス同士のけんかの原因になったり、予期せぬ妊娠につながるからです。

もし、愛犬を預けての旅行が、発情前期や発情期と重なってしまったら、ペットホテルで他の、特にオス犬がいる状況では興奮によるオスの鳴き声などで施設の近隣から苦情が来ることもあるので何かほかの方法を考えなければ旅行に行けないことになるかもしれません。

血液で施設を汚してしまったり、ほかの犬を興奮させたり、フェロモン臭で他の人を不快にしたりしないよう、発情期のわんちゃんとの旅行はあきらめる方もいます。

発情出血がある間は、犬用のおむつや、人間の生理用品を入れられる犬用パンツを利用される方も増えてきました。家具や床材などを血液で汚さずに済むので、利便性はありますが、陰部周辺の通気性が悪くなることで、皮膚炎になるケースも見られます。皮膚のかゆみに弱い犬にとって、発情出血中のストレスは倍増されます。紙おむつなどは、こまめに取り換えると同時に、皮膚の状態を健やかに保てるように注意する必要があります。

近隣や同居で発情期のメスがいることで、オス犬が興奮し過剰に吠える、遠吠えのような声で鳴くこともあります。屋外飼育をしているオス犬が、発情期のメス犬のフェロモンに反応して脱走することもあるほどです。メスが発情期の間は、近くのオス犬の行動にも気をつけておく必要があります。

 

以上のような3つのポイントについて、メリットがある不妊手術ですが、デメリットについてもまとめておきますね。

最も大きなデメリットは、手術後、肥満になる可能性が非常に高いという部分です。不妊手術を行うことで、ホルモンバランスが変化し、自由に食事を食べられるように飼育すると食事量は22%増加するとされています。それに対して、必要なカロリーが30%減少することも分かっています。手術前と同じ食事を与えているだけで、食事の量を30%減らさないと、肥満につながるということになります。

肥満は、「関節疾患、心臓疾患、下部尿路疾患、糖尿病、皮膚疾患」の発生リスクを高めることが知られています。

ただ、そのことを知ったうえで、食事の選択、運動管理について配慮すれば、適正体重を保つことは難しいことではありません。獣医師とよく相談してください。お勧めのお食事をご用意いたします。

次に考えられるデメリットは、不妊手術に関する全身麻酔と手術のリスクです。成犬になるまえに手術を行うリスクについて心配されることが多いですが、まだ小さいうちに行うことによって、傷も小さくて済みますし、麻酔の量も少なくて済みます。不妊手術は、適切に行えば、決して危険な手術ではありません。麻酔や手術を行っても大丈夫なのかどうかなど、全身のチェックや血液検査などの術前検査をしっかり行います。近年、疼痛管理(痛みにたいする処置)の研究も進み、通常の生活レベルを保ちながら、術後期間を過ごせることが多いです。

最後に、稀にではありますが、中型犬以上のサイズの犬では、不妊手術によて尿失禁の症状が出るケースもあります。これは、卵胞ホルモンを投与することで改善が見込めます。

まとめ

愛犬がメスの場合、妊娠と出産に関するメリットデメリットをふまえて考えたうえで、妊娠出産をしない飼育を選択されるのであれば、乳腺腫瘍の予防効果に関係することを考慮し、不妊手術をうける「時期」に配慮する必要があります。不妊手術を受けることで得られるメリットとしては、

健康面では、性ホルモンによって引き起こされる病気の予防になったり、発情期に抱えるストレスを取り除いてあげられること。

生活面では、発情に伴う、飼育の問題や飼い主さんの生活スタイル、旅行などのスケジュールに影響が出ることがなくなります。

デメリットとして、太りやすくなる、麻酔のリスク、稀に中型犬以上のサイズでの尿失禁がありますが、どれも、そのデメリットに対する理解を深めることで対応できると言えるでしょう。

以上のことから、当院では、仔犬をお迎えしたときに、不妊手術についての説明をさせていただいております。ご家族でよく話し合い、ご不明な点はお気軽にご相談ください。