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腎臓病で貧血になるって知ってますか?

2022年2月9日(水)

「腎臓病で貧血になります』と言われても多くの方は「そうなの?」って思いますよね?

今日は血液の造血と腎臓の関わりについて記事を書きたいと思います。

腎臓は尿を生産している機能だけではなく、実は血液の造血を生じさせるエリスロポエチンというホルモンの産生部位でもあります。

なので、腎不全が進行すると腎臓からエリスロポエチンが分泌されず、血液がうまく作れなくなり、貧血(腎性貧血は正球性正色素性貧血)になります。これを腎性貧血と呼んでいます。

猫の慢性腎不全(CKD)の30〜60%でこの腎性貧血状態に陥っており、ヒト医療・獣医領では慢性腎不全時のPCV25%以下の貧血ではエリスロポエチンの投与を行います。

獣医領で使用されるエリスロポエチン

 ヒト遺伝子組み換えエリスロポエチンが獣医領では使用されています。(というか、これしかないのです)

 

   エポエチン 100IU /kg 週3回投与

   ダルボポエチン 1ug/kg 週1回

 

ただし・・・・

「貧血を見つけててもすぐにエリスロポエチンの投与しない。」ことも重要です。

 まず、本当に腎臓病悪化による腎性貧血なのか?を診断する必要があります。

なぜかというと、腎性貧血以外の原因で貧血になっている場合は、

すでにエリスロポエチンが分泌されています。

よって、貧血の原因が、本当に腎性障害によるエリスロポエチン分泌障害による貧血がどうかを確認することが需要です。

やたらめったらにエリスロポエチンを使用しても腎性貧血でなければ全く効果がありません。。

除外診断

 出血・甲状腺機能低下症・免疫介在性溶血性貧血・鉄欠乏性貧血・骨髄疾患

 

「エリスロポエチン製剤の反応率」

   イヌ:85%

   ネコ:60%

とされており、鉄剤の投与も同時に行っていきます。

造血反応として、エリスロポエチンによって造血反応が生じても鉄欠乏があるとうまく造血できないためです。

鉄は必要!!

また、ヒト遺伝子組み換え型なので、使用頻度が増すと抗体が産生されて、効きにくい状態になります。

エポエチン500IU /kg /1週間もしくはダルボポエチン1.5ug/  Kg使用しても効果が認められない場合は

それ以上の効果が望めません。

「心腎貧血症候群」も重要です。

 心不全による血流不全によって腎障害が進行し腎性貧血を生じる病態

抗てんかん薬の4条件

2022年2月8日(火)

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抗てんかん薬(AED)についての基礎知識

てんかんの薬を投与するかは一定の指針がある

1:6ヶ月間に2回以上のてんかん発作がある場合

2:てんかん重積状態あるいは群発発作が認められる

3:発作後の体調が重篤。もしくは発作後体調不良が24時間継続する

4:てんかん発作の頻度・持続時間が3回の発作以降悪化している。

  

  *犬の疾患における特発性てんかん発作の有病率0.5〜0.75%(1000頭中5頭)

   猫においては0.5%と言われている

  *脳疾患においては特発性てんかんの割合は犬で35%猫で30%である。

 

 

「ゾニザミド」

  日本で開発された抗てんかん薬で、犬猫にも効果的である。

  副作用も少なく、動物用として「コンセーブ」という商品で発売されている。

  基本的に1日2回投与の錠剤の薬である。

「レバチラセタム」

  人医療で第一選択薬の薬である。

  神経細胞の末端のシナプス小胞タンパク2Aに作用し、グルタミン酸などの興奮性物質の放出抑制を行い

  神経の異常興奮を抑える薬である。

  この薬は肝臓に負担をかけない薬なので、肝障害の動物でも使用が可能。

  半減期が短いので1日3回の投薬が必要になるのと、剤形が比較的大きい、薬代金がやや高い。

  安全性が高い薬であるが、ごく稀に攻撃行動などの副作用報告があるが、情報が少なく不明なことが多い。

 

抗てんかん薬についての注意点

「抗てんかん薬は生涯飲み続ける薬である。」

よって、この薬が安全で、効果的な濃度で投薬できているのかを必ず確認しなければならない。

忙しいとついつい動物病院に薬だけをもらいに行きがちですが、血液検査や血中濃度検査を定期的に行い、

上手に付き合うのがベストです。

 

 

心不全の犬に対してどの利尿薬が効果的か?

2022年1月28日(金)

心不全の犬に対してどの利尿薬が効果的か?

心臓病に対して効果的な利尿薬。

利尿薬といっても「短時間的作用を持つラシックス」と「長時間的効果を有するトラセミド」があります。どちらの利尿薬もループ利尿薬と呼ばれ、腎臓に対して少し負担がかかりますが、心不全治療薬の大きな武器になっています。

今日は心不全状態に陥ったイヌのフロセミドとトラセミドの利尿薬の効果の比較試験の論文について紹介します。

ラシックスVSトラセミド..jpeg

「僧帽弁閉鎖不全症の心不全の犬におけるトラセミドミ投与効果TEST STUDY」

ループ利尿薬であるラシックス(フロセミド)は短時間で絶大な利尿作用を有しております。効果時間が短いために、昨今これに代わる長時間型ループ利尿薬であるトラセミドが犬の心不全に効果的であるのではないか、という大規模な実証検証が行われました。366頭の僧帽弁閉鎖不全の心不全のイヌを対象にして短時間型ループ利尿薬フロセミド1日2回と長時間型ループ利尿薬トラセミド1日1回投薬して3ヶ月(90日)の比較モニタリングを行いました。

結果

「フロセミド(1日2回投与)よりトラセミド(1日1回投与)の方が効果があり、心臓死のリスクを大幅に減少させる」ことがわかりました。

しかしながら、トラセミドの長期投与は腎臓に大きな負荷がかかるなど副作用の発現も多く見られ、定期的な腎臓のチェックが必要なことも明らかになりました。

Chetboul, V., et al. “Short‐Term Efficacy and Safety of Torasemide and Furosemide in 366 Dogs with Degenerative Mitral Valve Disease: The TEST Study.” Journal of Veterinary Internal Medicine (2017).

僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療

2022年1月27日(木)

僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療

僧帽弁閉鎖不全性は小型犬で多くは8歳以上が歳上の犬で75%の割合を占めております。つまり10歳以上になっていると何らかの心臓の弁膜症を起こしていると考えても間違いではありません。

その中で1番有名なのは僧帽弁閉鎖不全症(MRと呼ばれております)です。この僧帽弁閉鎖不全症は重症度によって5段階に分類されています。

ステージA

ステージB1

ステージB2

ステージC

ステージD

ステージDになってくると不可逆的な左心系障害(左心房左心室の重度の障害)によって右心系にも大きなトラブルを起こしてきます.

重度の僧帽弁閉鎖不全症では左房圧が過度に上昇し,その左房圧が肺静脈に伝わり,それが肺動脈圧の上昇を引き起こします。(圧受動的 伝播による肺高血圧).そして,繰り返される肺うっ血 あるいは肺水腫などによって,肺自体が線維化を起こし、硬い組織になるなどの器質的病変が進行し,肺高血圧に至ります(反応性肺高血圧).

つまり、重度の僧帽弁閉鎖不全は、血流の停滞を引き起こし、肺静脈・肺動脈の柔軟性が損なわれて、血管壁の硬化により肺高血圧症をひきおこします。

僧帽弁閉鎖不全性の末期による肺高血圧症の治療はまだ確立されてはおらず対応に苦慮します。

当院ではACVIMコンセンサスガイドラインに従い処方を心がけています

 ピモベンダン 1日3回

 ACE阻害剤

 利尿剤

 アムロジピン

 などを中心に投薬していきます。

 それでも失神・腹水などコントロールできない場合はシルデナフィルを追加で投薬していきます。

シルデナフィルの用量に関して

急性期では1〜2mg1日3回から開始して必要に応じて調整していきます。

しかし比較的低用量である0.5mg/kg 1日2日より投与することが当院では一般的です効果が不十分な場合は1日3回とする場合もあります

しかしながら僧帽弁閉鎖不全性に併発した肺高血圧症の治療を行うべきかの確立した基準は未だに存在しておりません。シルデナフィルを使用する場合は必ず僧帽弁閉鎖不全性の治療薬(ピモベンダンや利尿剤)を十分に投薬し、心筋収縮力を維持した状態にだけ使用しています。

なぜならシルディナフイルは強力な血管拡張薬なので肺動脈を拡張させ左心室流入血液量が増加することで心不全が一気に進行し肺水腫になると考えられる。

よって僧帽弁閉鎖不全性を伴う場合は高血圧症の治療は必ず心筋の収縮力を増加させるピモベンダンと利尿剤を併用しつつ、状態に応じシルデナフィルを適宜追加をしていきます。

僧帽弁閉鎖不全症にピモベンダンはどれぐらい有効か?

2022年1月27日(木)

「僧帽弁閉鎖不全症に対するピモベンダン(ベトメディン)の有効性」

僧帽弁閉鎖不全性の犬によく使用されている強心剤ピモベンダンがどれぐらい効果があるのかを調べた有名な論文があります。今日はその論文を紹介したいと思います。

「The EPIC STUDY(エピックスタディ:無作為臨床試験」この実験は2016年に行われ、日本を含めた11カ国36施設が参加した大規模他施設、無作為臨床試験です。

360頭の僧帽弁閉鎖不全性の犬で検討され実地されました。(僧帽弁閉鎖不全症のグレードはB1が対象:つまり心肥大兆候があり、症状がない360頭頭に対して実地)詳しい条件は以下の通りです。

左心房大動脈経比(LA/AO> 1.6)LVIDDN> 1.7 VHS > 10.5

     非投与群:ピモベンダンを投与しないグループ(プラセボグン)

     投与群:ピモベンダンを投与(0.2〜0.3mg /kg 1日2回投与するグループ

予後(生存延長日数)を比較検討しました。

うっ血性心不全もしくは心臓死までの中央値は、およそ15.4ヶ月の延長

さらに、全期間を通じて心臓致命的リスクが36%も減少しました。

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この試験は日本を含めた11カ国36節は参加した他施設試験でありピモベンダン投与開始の推奨時期を決定するための貴重な論文です。多くの国々が、協力して、僧帽弁閉鎖不全症にどれぐらい効果があり、どのタイミングで投与をはぜめたほうがいいのかを決定づけた論文です。

「この結果から心不全兆候が見られた場合はピモベンダンを使用したほうがピモベンダンを使用しない場合よりも1年以上の余命が伸びる」という結論に達しています。

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転記

https://vetmedin.jp/vet/epicstudy/