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僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療

2022年1月27日(木)

僧帽弁閉鎖不全症に合併した肺血圧症の治療

僧帽弁閉鎖不全性は小型犬で多くは8歳以上が歳上の犬で75%の割合を占めております。つまり10歳以上になっていると何らかの心臓の弁膜症を起こしていると考えても間違いではありません。

その中で1番有名なのは僧帽弁閉鎖不全症(MRと呼ばれております)です。この僧帽弁閉鎖不全症は重症度によって5段階に分類されています。

ステージA

ステージB1

ステージB2

ステージC

ステージD

ステージDになってくると不可逆的な左心系障害(左心房左心室の重度の障害)によって右心系にも大きなトラブルを起こしてきます.

重度の僧帽弁閉鎖不全症では左房圧が過度に上昇し,その左房圧が肺静脈に伝わり,それが肺動脈圧の上昇を引き起こします。(圧受動的 伝播による肺高血圧).そして,繰り返される肺うっ血 あるいは肺水腫などによって,肺自体が線維化を起こし、硬い組織になるなどの器質的病変が進行し,肺高血圧に至ります(反応性肺高血圧).

つまり、重度の僧帽弁閉鎖不全は、血流の停滞を引き起こし、肺静脈・肺動脈の柔軟性が損なわれて、血管壁の硬化により肺高血圧症をひきおこします。

僧帽弁閉鎖不全性の末期による肺高血圧症の治療はまだ確立されてはおらず対応に苦慮します。

当院ではACVIMコンセンサスガイドラインに従い処方を心がけています

 ピモベンダン 1日3回

 ACE阻害剤

 利尿剤

 アムロジピン

 などを中心に投薬していきます。

 それでも失神・腹水などコントロールできない場合はシルデナフィルを追加で投薬していきます。

シルデナフィルの用量に関して

急性期では1〜2mg1日3回から開始して必要に応じて調整していきます。

しかし比較的低用量である0.5mg/kg 1日2日より投与することが当院では一般的です効果が不十分な場合は1日3回とする場合もあります

しかしながら僧帽弁閉鎖不全性に併発した肺高血圧症の治療を行うべきかの確立した基準は未だに存在しておりません。シルデナフィルを使用する場合は必ず僧帽弁閉鎖不全性の治療薬(ピモベンダンや利尿剤)を十分に投薬し、心筋収縮力を維持した状態にだけ使用しています。

なぜならシルディナフイルは強力な血管拡張薬なので肺動脈を拡張させ左心室流入血液量が増加することで心不全が一気に進行し肺水腫になると考えられる。

よって僧帽弁閉鎖不全性を伴う場合は高血圧症の治療は必ず心筋の収縮力を増加させるピモベンダンと利尿剤を併用しつつ、状態に応じシルデナフィルを適宜追加をしていきます。