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もしかして、利尿薬が効いてない?

2022年2月2日(水)

「利尿薬抵抗性って言葉知ってますか?」

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僧帽弁閉鎖不全症が慢性経過をたどると、利尿薬がなかなかきかなくなる治療抵抗性を示してきます。

特に利尿薬を投与し始める僧帽弁閉鎖不全症ステージCという段階では、心腎関連症と言って腎臓にも負担がかかってきます。

利尿薬は僧帽弁閉鎖不全症などの心臓弁膜症の患者さんにとても効果がある薬です。しかし時に腎不全を起こしたり、利尿薬の効果がなくなったりするケースがあります。

今日はこの「利尿薬抵抗性」について紹介したいと思います

「利尿薬抵抗性について」

利尿薬というのは、腎機能を刺激・更新させて利尿作用を誘発させる薬です。しかし、慢性的に利尿薬を投与していくと効きづらくなってくる場合があります。これを利尿薬抵抗性と呼びます。

『利尿薬抵抗性の原因』

1腸管からの吸収の低下

→心不全が進行すると血液循環が悪化し、腸管が浮腫んで、浮腫になってしまう。その結果、飲んだ利尿薬が腸から吸収できず利尿薬の効果が発揮できない

2痛み止めなどの非ステロイド性抗炎症薬の投与や脱水症状

→利尿薬は血液中のアルブミンというタンパクと結合して腎臓に運ばれるが、それを阻害する薬や脱水などの全身状態の悪化があると利尿薬が効きづらい

3腎臓の構造的障害

→慢性的に利尿剤を投与し続けると、腎臓の構造的変化が生じた結果、Nαの再吸収が亢進が生じ、尿を産生しづらくなる。

4心不全による腎機能の低下

→心不全が進行するとRASS系(体液量を調節するホルモンの恒常性)と交感神経が活性化して、腎臓が尿を減少させる。(近位尿細管の再吸収)

5心不全の更なる悪化

→心不全によって血液の拍出量が低下し末期的な腎機能障害が生じてしまい、利尿薬が効かなくなる。

利尿薬体制になったときに考える対処法

1投薬経路の変更

腸管からの吸収が減弱している場合は静脈投与に切り替える

2他の種類の利尿薬への使用

スピロノラクトンなどの使用

考察・・・

心不全によって腎臓機能に障害が出た場合、ラシックスやトラセミドなどのループ利尿薬の使用を迷ったら・・・

「カルペリチドの併用を考慮に入れる」ってのも良いのかもしれません。