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(最新の論文)コロナウイルスと猫の関係:ついに判明した事実
2022年2月10日(木)
『コロナウイルスと猫の関係について』
コロナウイルスは猫の下痢を生じさせるウイルス疾患の一つです。
ネココロナウイルスと呼ばれており、病原性が軽度で、多くの猫が感染しております。
アルファ属のウイルスで、この属にはイヌコロナウイルス・ブタコロナウイルスなど哺乳類に感染するコロナウイルスが所属しています。
『ネココロナウイルスの強毒株の出現』
猫伝染性腹膜炎という病気をご存知でしょうか?
確定診断することが困難で、この病気になると猫はほぼ100%の確率で死に至らしめる凶悪なウイルス性疾患です。
この猫伝染性腹膜炎(以下F I P)の原因ウイルスがコロナウイルスとの何らかの関係が示唆されてきましたが謎が多い病気で、診断すら不可能です。(現在P C R検査で補助的にコロナウイルスの検出を行なっていますが、確実な検査とは言えません。)
しかし多くの研究でその原因がようやく解明されてきました。
実はネココロナウイルス1型(F C O V−1)とネココロナウイルス2型(F C O V−2)が重複感染してしまうと、猫の細胞内で遺伝新組み換えが発生し、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異することがわかっています。
今回イタリアの論文(2021 Research in Veterinary Science Mutation analysis of the spike protein in Italian feline infectious peritonitis virus and feline enteric coronavirus sequences.)で、F I Pに感染している猫の腹水サンプル19症例と 猫コロナウイルス21症例のコロナウイルスのRNAの塩基配列を比較したところ、コロナウイルスのスパイクタンパク質S1060AとMタンパク質M1058Lに変異が確認されたとの報告がありました。今回の論文で、もしかしたら近い将来、F I Pの遺伝子検査の確立がなされる可能性があり、さらに治療法の研究につながるでしょう。
*ちなみにネココロナウイルス及び猫伝染性腹膜炎ウイルスFIPはヒトには感染しません。
Research in Veterinary Science
Volume 135, March 2021, Pages 15-19
Mutation analysis of the spike protein in Italian feline infectious peritonitis virus and feline enteric coronavirus sequences.
イタリアのネコ伝染性腹膜炎ウイルスおよびネコ腸コロナウイルス配列におけるスパイクタンパク質の変異分析。
N.DecaroaV.MariaG.LanaveaE.LorussoaM.S.LucenteaC.DesarioaM.L.ColaiannibG.EliaaF.FerringobF.AlfanocC.Buonavogliaa
特集:コロナウイルスの基礎知識
2022年2月10日(木)
Q「コロナウイルスはどんなウイルスですか?」
コロナウイルスは遺伝子はDNAではなく一本鎖RNAが存在し、30000塩基配列をコードしています。(RNAウイルスのなかでは最大)
大きさは直径100nmの球状ウイルスです。
表明に突起状のスパイクが多数存在し、電子顕微鏡で、「太陽の日食時に見られるコロナ」状に見えるためにコロナウイルスと名付けられました。
コウモリなどが宿主と言われており、多くの哺乳類(ヒトイヌネコブタウシ鳥類など)に感染し比較的に軽度の症状を示すウイルスとして有名でした。
Q「コロナウイルスの分類から考えるウイルスの仲間達について」
ウイルスたちは、人間のように人種のような区分があります。
今回のコロナウイルスはニドウイルス目のコロナウイルス科に分類されていおり、
さらに、それはコロナウイルス亜科とトロウイルス亜科に大別される。
そしてコロナウイルス亜科はアルファ ベータ ガンマ デルタ に分けられており
哺乳類(人・犬・猫・豚・イルカ・コウモリ・マウス・ラットなど)や鳥類に感染する共生ウイルスでした。
Q「ヒトの風邪ウイルスとしてのコロナウイルス」
コロナウイルスはそもそも、ヒトの風邪のウイルスです。
229E株・OC43株・NL63株・HKU1株の4種類のコロナウイルスはヒトの風邪ウイルスとして有名です。
しかし、コロナウイルスは容易に変異を繰り返すウイルスのなので、もちろんこの他にも風邪症状を引き起こす変異コロナウイルスは多く存在する可能性はあります、解析はされていないのが実情です。。
なぜなら、風邪の原因となるコロナウイルスは致死性が低く、ヒト以外からの感染経路が不明であったためでした。
Q「コロナウイルスの歴史を教えてください」
突然の強毒株の出現!!!
「SARSコロナウイルスによる重症呼吸器症候群の発生」
2002年に中国広東省で致死率10%の重大な呼吸器疾患感染症が登場し、これはのちの解析で、変異したコロナウイルスがコウモリから人への感染がによって発症した感染症であることが解明されました。このSARSコロナウイルスはベータ属のコロナウイルスに分類され、ヒトのACE2受容体に結合して体に侵入することもわかっている。
「中東呼吸器症候群の発生」
サウジアラビアを中心としてヒトコブラクダから感染する致死率35%の感染症が韓国内でアウトブレイクが起きました。
ヒトからヒトへの感染も確認され、SARSウイルスと同類と考えられ、ベータ属のコロナウイルスに分類された。そしてこのコロナウイルスはヒトのDPP4受容体に結合して体に侵入することも解明されました
「新型コロナウイルスの発生」
2020年2月にパンデミックになっていたコロナウイルスのゲノム塩基配列が解明され、その塩基配列が2003年に発見されたSARSコロナウイルスと大変酷似していることがわかった。それによりSARSコロナウイルス2型SARS–COV−2と命名され、COVID−19と正式名命名された。
さらにスパイクタンパク質が変異が起き、アルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、オミクロンがWHOにおいて命名されています。
人から人へ感染する、そして人から猫への感染するウイルスに変異。
実はコロナウイルスは以前から「猫」と相性がいいと言われてしまっています。
*猫の特集はまた次回
歴史的から見ても・・・・・
コロナウイルスは哺乳類全般に発生して、さまざまな変異を繰り返し、ヒトでは風邪の一般的なウイルスだったのがSARS、MARS、さらに新型コロナウイルスに変異している。おそらく風邪コロナウイルスも昔は致死率が高い強毒株が存在し、致死率が低い風邪コロナウイルスに弱毒変異した可能性が高いと考えられています。
腎臓病で貧血になるって知ってますか?
2022年2月9日(水)
「腎臓病で貧血になります』と言われても多くの方は「そうなの?」って思いますよね?
今日は血液の造血と腎臓の関わりについて記事を書きたいと思います。
腎臓は尿を生産している機能だけではなく、実は血液の造血を生じさせるエリスロポエチンというホルモンの産生部位でもあります。
なので、腎不全が進行すると腎臓からエリスロポエチンが分泌されず、血液がうまく作れなくなり、貧血(腎性貧血は正球性正色素性貧血)になります。これを腎性貧血と呼んでいます。
猫の慢性腎不全(CKD)の30〜60%でこの腎性貧血状態に陥っており、ヒト医療・獣医領では慢性腎不全時のPCV25%以下の貧血ではエリスロポエチンの投与を行います。
獣医領で使用されるエリスロポエチン
ヒト遺伝子組み換えエリスロポエチンが獣医領では使用されています。(というか、これしかないのです)
エポエチン 100IU /kg 週3回投与
ダルボポエチン 1ug/kg 週1回
ただし・・・・
「貧血を見つけててもすぐにエリスロポエチンの投与しない。」ことも重要です。
まず、本当に腎臓病悪化による腎性貧血なのか?を診断する必要があります。
なぜかというと、腎性貧血以外の原因で貧血になっている場合は、
すでにエリスロポエチンが分泌されています。
よって、貧血の原因が、本当に腎性障害によるエリスロポエチン分泌障害による貧血がどうかを確認することが需要です。
やたらめったらにエリスロポエチンを使用しても腎性貧血でなければ全く効果がありません。。
除外診断
出血・甲状腺機能低下症・免疫介在性溶血性貧血・鉄欠乏性貧血・骨髄疾患
「エリスロポエチン製剤の反応率」
イヌ:85%
ネコ:60%
とされており、鉄剤の投与も同時に行っていきます。
造血反応として、エリスロポエチンによって造血反応が生じても鉄欠乏があるとうまく造血できないためです。
鉄は必要!!
また、ヒト遺伝子組み換え型なので、使用頻度が増すと抗体が産生されて、効きにくい状態になります。
エポエチン500IU /kg /1週間もしくはダルボポエチン1.5ug/ Kg使用しても効果が認められない場合は
それ以上の効果が望めません。
「心腎貧血症候群」も重要です。
心不全による血流不全によって腎障害が進行し腎性貧血を生じる病態
猫のSAAの診断的意義と弱点
2022年2月8日(火)
炎症マーカについて
炎症マーカーは炎症発生時に鋭敏に反応し、そして速やかに上昇し、炎症が収まるとともに速やかに低下していくので、病気の発見、そして治療効果の判定において優れたツールです。
この炎症マーカーはヒトの医療検査では「C反応性蛋白」という名前で知られており、肺炎時の「肺炎球菌と交差性を示す蛋白」として発見されたため、C反応性蛋白CRPと命名されました。
猫の炎症性マーカーはSAAが有名ですが、猫のSAAは実は人も肝臓で作られています。
感染や外的要因が生じると抗原提示細胞からサイトカインが産生され、肝臓内でSAA・CRPの産生が生じます。
アミロイドは放出されすぎると全身に沈着を起こしてアミロイドーシスという疾患を生じさせる。この前駆物質がSAAである。
「このSAAは万能な炎症マーカーなのか?」
このSAAは全ての炎症で上昇する炎症マーカーではありません。
炎症の程度や重大な生体疾患が存在するとSAAは上昇しますが、上昇しない場合があるので注意が必要です。
SAAを測定する診断的意義。
①リンパ腫・急性膵炎・FIP
特に猫の消化器型リンパ腫で顕著な上昇が起きるのでリンパ腫を疑うための重要な検査です。
*慢性腎不全屋甲状腺機能亢進症では非炎症疾患であるにもかかわらず上昇している場合もあるので、注意が必要
②治療効果の判定
SAAが上昇している場合、治療に反応してくると低下してくる。治療効果の判定に有用です。
③予後因子
SAA上昇が止まらない場合は生存期間が短いと言われています。
*注意
「SAA検査の弱点」
SAAは非常に診断ツールとしては優れているが、上昇しない場合もあります!!
一概にSAAが高くないからと言って、炎症の有無を判断すべきではなく、補助診断ツールとして有用に活用するのが重要!!
抗てんかん薬の4条件
2022年2月8日(火)
抗てんかん薬(AED)についての基礎知識
てんかんの薬を投与するかは一定の指針がある
1:6ヶ月間に2回以上のてんかん発作がある場合
2:てんかん重積状態あるいは群発発作が認められる
3:発作後の体調が重篤。もしくは発作後体調不良が24時間継続する
4:てんかん発作の頻度・持続時間が3回の発作以降悪化している。
*犬の疾患における特発性てんかん発作の有病率0.5〜0.75%(1000頭中5頭)
猫においては0.5%と言われている
*脳疾患においては特発性てんかんの割合は犬で35%猫で30%である。
「ゾニザミド」
日本で開発された抗てんかん薬で、犬猫にも効果的である。
副作用も少なく、動物用として「コンセーブ」という商品で発売されている。
基本的に1日2回投与の錠剤の薬である。
「レバチラセタム」
人医療で第一選択薬の薬である。
神経細胞の末端のシナプス小胞タンパク2Aに作用し、グルタミン酸などの興奮性物質の放出抑制を行い、
神経の異常興奮を抑える薬である。
この薬は肝臓に負担をかけない薬なので、肝障害の動物でも使用が可能。
半減期が短いので1日3回の投薬が必要になるのと、剤形が比較的大きい、薬代金がやや高い。
安全性が高い薬であるが、ごく稀に攻撃行動などの副作用報告があるが、情報が少なく不明なことが多い。
抗てんかん薬についての注意点
「抗てんかん薬は生涯飲み続ける薬である。」
よって、この薬が安全で、効果的な濃度で投薬できているのかを必ず確認しなければならない。
忙しいとついつい動物病院に薬だけをもらいに行きがちですが、血液検査や血中濃度検査を定期的に行い、
上手に付き合うのがベストです。
オミクロン株(B.1.1.529)の命名法
2022年2月7日(月)
最近、オミクロン株の話題ばかりで、嫌になりますが、一応知っておいた方がいい基礎知識、、、と言いながら少し難しいです。
今日は「オミクロン株(B.1.1.529)の命名法」について
このコロナウイルスって誰が命名していると思いますか?
WHOの偉い人?って思ってました。もちろんそれも間違いではないです。
ただ、科学的に分類するために以下の方法で分類がされ、命名されています。
新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスに類似した塩基配列を有し、極めて変異しやすいウイルスとして感染拡大が生じており、遺伝学的に分類し、命名するのには数が多すぎてしまう。よって、データーベースを構築し、シークエンサーで塩基配列を読み込んで、そのデーターベースにアップロードすることで、分類・命名さするという事になりました。
*B.〇.〇.〇等の分類はPango命名法と呼ばれ、WEB上の新型コロナの発生源であるセンザンコウの遺伝子を元にアルゴリズムに基づいて系統を割り当てるソフトウェアで分類が行われております。
つまりは、コロナウイルスの遺伝子塩基配列をソフトウエアにアップロードするとビックデーターを元に人工知能によって分類されるという事かな
Phylogenetic Assignment of Named Global Outbreak LINeagesの頭文字で、訳すると「世界的な大流行と命名された系統樹の割り当てを行い命名する方法」
*オミクロンなどのギリシャ数字の命名はあくまでもWHOがラベリングした標記である